ひったくり
自分の知り合いの飲み屋の女の子が朝の5時ごろまで飲んでいて、酔っ払って家まで歩いて帰っていた。
家の近くまで来た時、後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえた。その子も、朝のジョギングをしている人だろうと、別に気にも留めなかったが、次の瞬間、その「走って来た男」は、彼女のハンドバックをばくぅっ!と、いきなりひったくった。
「あーーっ!!」と声を上げたが、もう遅い。男はそのままぐんぐん加速し、最初の角を曲がって、すぐに見えなくなった。一瞬の出来事だった。
酔ってる上にハイヒール。追いかけたって、追いつけるわけがない。言っては悪いが、ひったくりにとって、これほど格好の獲物もいない。
すぐに警察を呼んだ。パトカーが駆けつけてきて、警官が何人も降りてきた。警察の人に状況を聞かれる。
「それで、犯人の特徴をなるべく詳しく言ってもらえませんか?髪型とかメガネをかけてたとか、体型とか、覚えてる限りで結構ですから。」
「はい、白いトレーナーを着てました!」
「はい、その他には?」
「それだけです。」
「はい?」
「すいません、それしか覚えてません・・。」
酔ってるところへ、不意打ちくらったような、一瞬の出来事。詳しく覚えているわけがない。
そういうことで、事件は迷宮入りになった。