高級クラブのノルマ
5-6年前に閉店した店ではあるが、自分のいる市には、かつてこの辺りではNo.1といわれていた高級クラブがあった。
高級ゆえに料金も高かった。1人で飲みに行っても普通で2万くらい、高い時には8万くらいになる。お客はほとんどが経営者とか高額所得者。
当時その店で働いていた女の子が、
「あの店にいると、働くためにすごくお金がかかるのよ。」ということをよく言っていた。
「働くためにお金がかかる」とは意味が分からなかったが、話を聞いてみると、まずホステスは、週一回は美容院に行って髪をセットしなければならない。
そして毎月、指定された服を買う。それは和服だったりドレスだったりする。美容院も服代も自分が払う。
また、遅刻や早退は一回につき一万円の罰金が課せられる。
この「遅刻や早退」というのが問題で、「同伴(どうはん = 店の常連客と、店の開店前に会って一緒に食事をし、そのまま店に連れてくること)」をして開店時間に間に合わなかった場合、店にお客を連れてきたにも関わらず、遅刻扱いとなって罰金が課せられる。
また、店の営業時間は深夜1時までであったが、その日はお客が少ないから、と店長が店を0時半に閉めたとする。するとホステスたちは早退扱いになって罰金一万円が課せられるのだ。結構めちゃくちゃなところがある。
更には、一週間でボトル5本のキープを取るのがノルマで、取れなかった場合には一本当たり一万円の罰金を課せられる。
一本も取れなかった場合にはもちろん罰金5万円。この地方では、能力や運にもよるがホステス一人当たり一週間で3本のキープを入れさせるのも難しいとのこと。
罰金で給料がどんどん削られていく。服代と美容院代で生活が圧迫される。
あんなに高級店にいて華やかに着飾っているのに、実はそのおかげで生活が苦しいとは完全な矛盾。こんな店は全国でも珍しいかも。
が、飲み屋の業界では、この店で働いているというだけで、他の店の女の子とは別格としてお客も見てくれるので、まさにプライドだけでそこにいるようなものだった。
この店の晩年は、一晩営業してお客がゼロという日もしばしばあって、ついに閉店。
これもある意味ブラック企業。不景気が続く昨今、色んなところで無理難題が強いられている。