真夜中に山奥の細道で出会ったバイク。
随分昔のことになりますが、ある日の真夜中、かなり遠いところから家の方に向かって車で走っていました。
山の中を走っている時、どこでどう間違えたのか、車が1台しか通れないような、しかも舗装もされていない泥の道に迷い込んでしまいました。
これは現場ではない上に昼間の写真ですが、参考までにこんな感じのところでした。こういう道に真夜中に来たわけです。
この当時まだスマホもなかった時代で車にもナビはついていませんでした。
どこか遠くへ行くにも印刷された地図を見て行っていた時代です。そんな状態で夜中の3時頃、山の中で迷ってしまいました。道は延々と細い道が続いています。
だいたい、舗装もされていないような道でこのまま進んでどこかへ抜けることができるのかどうか、もし行き止まりにでもなったらここまで来た道をバックで帰らなければなりません。ナビがないのですから、全く先のことが分かりません。
ものすごい恐怖の中、方向転換する場所もなかったので前へ進むしかありません。どれくらいの距離を走ったか分かりません。泥の道になって距離的には1kmも進んでいなかったのかもしれませんが、スピードが出せませんのでとてつもなく長い距離を走っているように感じました。
心臓がドキドキして喉が乾くような感覚です。ひたすら走っていましたらようやく少し広いところへ出ました。
ここでしたら何回も切り返せば方向転換できそうな場所でした。このまま進み続けようかそれともここでUターンして引き返そうか、いったん停まって考えることにしました。
車を止めてまもなく、今自分が来た道の方からバイクの音が聞こえてきました。道はカーブしているので音しか聞こえません。
夜中の3時ごろです。しかもこんな細い泥の道、外灯もないような真っ暗な山奥です。こんなところにバイクが来るわけがありません。
幽霊バイク!
この地で事故死した人が幽霊となってバイクで走っているのではないかとビビり上がりました。心霊現象が起こってもおかしくないような場所でした。
バイクの音はどんどん大きくなります。
「なんやっ!なにが来るんや!」
恐怖は最高潮に達しました。そしてついにライトが見えてバイクはその姿を現しました。
そのバイクは後ろの荷台に大きな荷物入れがついており、前のカゴには新聞の束が入っていました。
新聞配達の人でした。
人間だと分かるとほっとしてすぐに車から飛び出して手を振ってその人を止め
「すいません!道に迷ったんですが、この先はどこか繋(つな)がっていますか?!」
と聞きましたら
「いや、この先は行き止まりになってますので、ここで引き返した方がいいですよ。」
と言われました。忠告に従って車を何回も切り替えしてUターンすることにしました。
ですがその人はバイクでそのまま奥に走って行きましたから、この奥に家があるんでしょうね。それもびっくりです。
Uターンして今来た道を走っていましたら、さっきのバイクが後ろから追いついてきました。さっき出会った場所のすぐ先が家だったんでしょう。とにかくこの人のおかげで助かりました。
しかし車で来てても、ものすごく怖い場所だったのに、この人は毎晩暗い中、あの道を新聞を持ってバイクで走っているのか。。
世の中にはすごい人がいるもんだ。
時々びっくりするようなところに家があって、ですがそこに人が住んでる以上、配達の人たちもそこに行っているのだということが改めてわかったような一件でした。