メールちょうだいと言われて

自分がまだ、前の会社にいた頃のことだから、ずいぶん前のことだが、その当時の会社のお客さんとして知り合った、60代半ばくらいの男の人がいた。その人と会った時に言っていたが、最近初めてパソコンを買ってインターネットにつなげたらしい。もちろんメールも使えるように設定してもらったという。
 
「メールが出来るようになったけど、誰からもメールが来なくてさー、ねえ、メールちょうだいよ。何でもいいから何か書いて送ってよ。」
と、頼まれた。
 
「分かりました。送ってみます。」と言ってアドレスを聞いて帰ったが、当時自分は、家を出発して帰って来るまで毎日18時間くらいという、メチャクチャハードな会社にいたので、はっきり言って家に帰ってからは、1分でも惜しい。
(でもこの会社は、時間が長過ぎるわりには、手取り15万だったが。)
 
結局メールを出したのは数日後である日曜日。「先日はありがとうございました」から始めて、気を使って相手が返信しやすい方向に文章を振って送信した。遅れたが一応、約束は果たした。
 
相手はまだパソコンメールが珍しいような状態なので、返事でも返ってくるのかと思って待っていたが、4日も5日も経っても返事は来ない。
 
届かなかったのか、返信の仕方が分からないのか、と思いながらも日は経ち、次にその人に会ったのは、ずいぶんと日が経ってからのことだった。
 
会った時に一応その人に
「この間、メール送ったんですけど、ちゃんと届きました?」
と聞いてみた。
 
すると
 
「えーっ、ホントに送ってくれたんだ!いやー、ごめんごめん、今じゃ全然使わなくなってさー。へー、送ってくれたんだー!
 
いやー、まさかホントに送ってくるとは思わなかったよ、はははははは。」
 
と言われた。
 
ナメてんのか、この人。あんたがメールくれって言うから、送ったんだろーが。
 
自分が転職してからは、もうこの人に会う機会はないが、今では多少は使っているのだろうか。

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