態度の悪い新人に対する教育。

社員数40~50人の、ある建設会社が一人の新人を雇(やと)った。この新人は高卒で、まだ18歳。高校時代は暴走族に入っていた。

卒業しても格好はそのままで、髪は金髪、ガラの悪そうな顔で、礼儀の「れ」の字も知らない。態度もでかく、敬語も全く使わない。普通の会社だったらまず、どこも採用しないような人間だった。
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この新人の入ってきた初日、社長は新人を連れて、ある現場へとやって来た。この社長はスーツを着て会社にずっといるような社長ではなくて、自分も現場に出てみんなと一緒に作業を行っている。
ちなみにこれ以降はその社長から直接聞いた話である。
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社長じきじきに新人の教育を行う。午前中の作業が始まったが、新人はやはり生意気の言い放題である。周りの社員もちょっと不愉快を感じていたが、このあたりはまだ社長の許容範囲のようだった。

昼飯の時間になった。現場で座り込んでみんなで飯を食う。食い終わった新人が社長に言った。

「社長、ちょっとコーヒー買(こ)うてきてーや。社長のおごりで。
えかろー、それくらい。」

この社長も非常にキレやすい性格で、そのことを知っている先輩社員たちはヒヤッとしたが、社長は

「おう、ちょうどワシも飲みたいと思っとったところじゃ。」
と言ってすんなりコーヒーを買いに行った。

しばらくして缶コーヒーを両手に一本ずつ持って社長が帰って来た。

「おう! ご苦労! なーんて言ったら怒る?」とまた新人が言った。

社長は新人に近づいていき、あぐらをかいて地面に座っている新人の2メートルくらい前で立ち止まった。次の瞬間、社長はいきなり投球フォームに入った。

周りの社員があっと思う間もなく、社長は思いっきり新人の頭めがけてコーヒーを投げつけた。

「ばっかあん!!」と音がして、コーヒーはものの見事に新人の額(ひたい)に命中した。

「ぐわああぁぁ!」
新人は額を押さえて後ろに倒れ、地面の上をのたうちまわる。

「おう、買(こ)うてきてやったけえ、飲め。」
「・・・いただきます。」

新人が珍しく敬語で返事をした。

午後からの作業が始まってしばらく経った時、社長が
「おう、○○君、あれ取って来てくれるか。」
と新人に言うと、

「自分で行ったら~。」と、また横着(おうちゃく)な返事が返って来た。

社長はすぐにスパナを握り、新人の後ろへまわり込んだかと思うと、次の瞬間、スパナを思いっきり新人のヘルメットめがけて振り降ろした。

「ばっかあん!!」
と、すごい音が響く。

「ぐわあっ!」
新人が思わず片ヒザをついた。ヘルメットごしでもすごい衝撃が伝わった。

「よう聞こえんかったけえ、もう一回、言(ゆ)ーてくれるか。」
「・・・すぐ取って来ます。」新人は言いつけ通りの行動に走った。

この後も横着な態度を取るたびに、一歩間違えば殺人レベルの鉄拳制裁が行われた。教育のかいあって、夕方には新人の態度も言葉使いもずいぶんと向上した。

初日が終わった。まだまだ教育は始まったばかりである。というか、こんなことやってたら、すぐに会社を辞めてしまいそうな気もするが。

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