アストロ球団。約50年前の野球漫画。現実離れしたスーパープレイの代表格。
現代の野球漫画はリアリティのある現実に近い展開が主流になっていますが、大昔の野球漫画は現代とは大きく違っていました。ルール無用の実現不可能なスーパープレイや魔球などが物語の中心でした。
ある意味ハチャメチャの内容ではありましたが、自分としてはその中でも最も現実離れしていた野球漫画がアストロ球団だと思っています。
ネットでも色々と紹介されていますが、試合中に何人も死人や廃人が出たり、動けないはずの重傷を負っているのに試合を続行したり、実行不可能と思われるプレイがたびたび登場します。
アストロ球団は、原作:遠崎史朗さん、作画:中島徳博さんにより、1972年(昭和47年)から1976年(昭和51年)まで週刊少年ジャンプに連載された漫画です。
野球超人になるべくして生まれた、体にボール型のあざを持つ9人の超人が順次メンバーに加わり最強のプロ野球チームを目指して戦っていく物語です。
アストロ球団の創始者であり監督はフィリピン人のJ・シュウロです。彼は子供の頃、戦争によってフィリピン レイテ島に出征していた巨人軍の名投手・沢村栄治と出会い、沢村選手に「自分は明日死ぬが、お前の手で世界最強の野球チームを作ってくれ。」と頼まれます。
物語はJ・シュウロとアストロ超人の宇野球児(のちに改名して宇野球一)が出会うことから始まり、順次メンバーが増えていきます。
当時のコミックスは全20巻で完結していますが、1試合の展開が長いために全部で3試合しかしていません。ブラック球団とロッテオリオンズ、それとビクトリー球団の3つです。
9人全員が揃ったのは物語の終盤で、しかも最後の一人はメンバーに加わっただけで彼を含めた試合は行っていません。
最終的に日本のプロ野球では球団が不認可になり、海外へ旅立つところで物語は終わります。
アストロ超人は全員名前の冒頭に「球」の字がつきます。球一、球二、球三郎・・といった感じです。
ここから、主だったスーパープレイの紹介をしていきたいと思います。
コミックスをスキャンしたため画像は中心部分がどれもゆがんでいます。
▼ジャコビニ流星打法
あらかじめバットにひびを入れておき、そのバットで打つとバットが砕け散ってボールと一緒に飛んでいきます。どれが本当のボールか分からないようにして、ホームランを狙います。
▼三段ドロップ
アストロワン宇野球一の初期の頃の魔球です。いったんボールが浮き上がってその後3段階の角度で落ちていきます。最後は落ちたボールが再び浮き上がってキャッチャーミットに収まります。

▼球七・球八の守備。人間を投げる守備
アストロ超人であり外野を守る明智球七・球八は双子の兄弟です。小さい方が兄の球七、大きい方が弟の球八です。
外野をこの2人で守りますが、2人は一緒の場所に立っており、ボールが飛んでくると弟の球八が兄の球七を投げ、球七がボールをキャッチします。
ホームラン殺しであるこの守備は相当な上空まで飛ぶことができます。

ブラック球団
アストロ球団の最初の対戦相手です。自分自身や親が昔巨人軍にいたという過去を持ち、巨人軍に恨みを持つ者ばかりが集まった球団です。別名ふくしゅう球団です。
▼殺人L字ボール
アストロ球団が最初に戦った球団であるブラック球団のピッチャーである無七志(むなし)が投げる殺人ボールです。バッターを殺害するのが目的です。

超スローボールでありながらバットが当たった瞬間、ボールはバットに沿って進みバッターの手に当たって跳ね上がり、額(ひたい)を直撃して殺害します。
これでアストロメンバーである球二が死亡しますが、死の間際、球二は、お金欲しさでボール型のあざを入れ墨で作っていた偽物の超人であることを明かし、メンバーに謝って死んでいきます。
この試合でアストロのマネージャー役を務めていた少年が雷に打たれてボール型のあざがあることが判明し、二代目球二となります。
ブラック球団との試合ではアストロ球団の他のメンバーは殺人L字ボールは全て見送るしかなかったのですが、特訓を受けた球三郎がやり投げのような打法で打ち返し、それがキャッチャーを直撃するため2人のキャッチャーが退場となり、ボールを受けられるキャッチャーいなくなって無七志(むなし)は降板しました。
試合はこの後アストロ球団が12点を入れ、一方的な勝利となっています。
ブラック球団にはアストロ超人であるカミソリの竜(後の高雄球六)が所属していました。ブラック球団がアストロに負けた後にカミソリの竜は旅に出ます。
また、アストロ球団との試合の後、巨人軍は無七志(むなし)をスカウトします。
父親のことで巨人に恨みを持っている無七志(むなし)は当然拒否をしますが、川上哲治監督は、巨人側と無七志の1対1の打撃勝負を申し込み「君が負けたら巨人軍に入れ」と勝負によって獲得を目指します。
この勝負は無七志(むなし)と川上哲治監督で行われました。バッターボックスに立った川上監督は無七志(むなし)が投げた瞬間に空中回転でバッターボックスを移動し、打った瞬間ボールは自分の方ではなく外に向かって走り始めたため、それをホームランして殺人L字ボールを破ります。
▼アストロドーム
アストロ球団のホームグラウンド。西新宿に建設された屋内野球場で、収容観客数は15万人、大きさは甲子園球場の約3倍あります。ビクトリー球団との試合では100万人の人間が球場に押し寄せました。
ロッテ戦
アストロ球団の2戦目。金田監督率いるロッテオリオンズとの試合です。
▼リョウ坂本
ロッテの助っ人選手であり最終兵器のリョウ坂本。
最初は代打専門で登場し、打席には袴(はかま)をはいて武道着で打席に立ちます。
秘打・消える打球によるホームランです。

消える打球はあまりにも凄まじいスピードでボールを叩くためボールの表面が裂けて飛んで行きながらその裂け目からボールの中身が出てボールの皮だけになる打法です。
目で見ることが困難になるため消える打球と呼ばれます。
また、リョウ坂本はホームランを打ってベースを回らなくてもホームランが認められます。
▼モンスタージョーを葬る
ロッテの助っ人外人であるモンスタージョー。ロッテ前半戦での強敵でした。
アストロ選手の打撃で両手が潰されてまともな守備ができない状態で、球三郎のホームラン性の当たりを体で受け止めます。しかしそのままスコアボードの電光掲示板に叩きつけられ退場します。廃人となります。
▼リョウ坂本の超守備
この漫画はグローブをつけない選手が多くおり、リョウ坂本もその一人です。ボールを真剣白刃取りでキャッチします。
▼スカイラブ投法
宇野球一の魔球であるスカイラブ投法。右手に持ったボールを放り投げ、それを左手でバレーボールのアタックをするような形で投げます。
ホームベース上で急激に落ちる魔球です。
スカイラブ投法対消える打球の、リョウ坂本との対決の場面です。

▼毎回重傷
主人公とも言える宇野球一に次いで目立つのがこの明智球七です。球八に自分自身を投げてもらって空を飛んで外野を守りますが、毎回のように何かで重傷を負って常に体がボロボロです。

▼観客に代打を求める
ロッテ戦延長10回の裏。アストロの攻撃。2アウト1塁。カウントツースリー。
バッターは鎖骨を骨折し、左ひじにもヒビが入っている宇野球一です。
ファウルで粘るも体の限界を感じ、球三郎が観客で誰か代打に立ってくれる人はいないかと呼びかけます。
それに応(こた)え、観客席から登場したのは、かつての敵・元ブラック球団のカミソリの竜です。アストロ球団との試合以降行方不明となっていましたが、ここで登場します。
カミソリの竜がコホーテク彗星打法で放った打球はリョウ坂本の守備を破り3塁打です。1点返します。

続く球三郎の打球はホームラン性の当たりです。外野のリョウ坂本はハリケーンキックで蹴り返しますが、カミソリの竜がキャッチャーを弾き飛ばしてホームインし、アストロ球団はサヨナラ勝ちします。得点は16対15でした。
ビクトリー球団戦
アストロ超人でありながら、アストロ球団の敵に回った峠球四郎が作った球団がビクトリー球団です。バックに大金持ちの祖父と巨人軍がついています。
野球とは関係のないそれぞれのスポーツ界の一流選手を引き抜きチームを結成します。
ビクトリー球団には、アストロ超人である伊集院球三郎の兄・伊集院大門が加わります。伊集院大門は陣流拳法の総帥であり、実家である陣流拳法の総帥の座を巡って弟の球三郎といろいろあり、球三郎を激しく憎んでいます。
ビクトリー球団戦では、試合そのものに加え球三郎と大門の戦いも並行して描(か)かれました。
▼二刀流
二刀流といえば大谷翔平選手の代名詞ですが、この時代すでに二刀流が登場しています。ビクトリー球団の雷剛(らいごう)です。
ピッチャーとバッターの二刀流ではなく、バットを2本持って打席に入る正統派の二刀流です。
バットを2本持っているのでバットを2回振ることができます。これは両方空振りでした。
▼伊集院大門の守備
陣流拳法奥義・波がえしでボールを蹴って送球します。

▼ビクトリー球団ピッチャー氏家慎次郎(うじいえ しんじろう)
ビーンボールを多用してアストロ球団のメンバーを抹殺しにかかります。
宇野球一との最初の対戦です。スクリューボールです。

▼氏家慎次郎と球八
球八もまた氏家(うじいえ)のビーンボールにやられます。

▼氏家慎次郎と球一が再び対戦
投球の最中、氏家は力を入れるあまり頭の血管が爆発し、頭から血が吹き出ます。
球一は氏家の球をホームランしますがその直後、球一は首から大出血して倒れます。
これも氏家のビーンボールでした。

氏家のビーンボールの解析です。球一の首を切ったのはボールの皮でした。
▼伊集院大門の守備2
カミソリの竜(球六)が放ったアンドロメダ大星雲打法を大門は体で受け止めます。

▼大門がヌンチャクバットで球六を倒す
球六の打球を体で受け止めた大門が仕返しをします。ヌンチャクバットを使って球六を狙って打ちます。打球は球六の顔を直撃します。
▼大門がキックで球五を倒す
一塁に向かっていた球五は、ファースト大門によって体を強烈に蹴られて弾き飛ばされます。
後のアナウンスで、肋骨(ろっこつ)を8本折られ、その骨が内臓に食い込む極めて危険な状態と発表されます。
大門が審判を脅して確認をとるとアウトと認められます。
球五は退場となりますが、のちに復帰して守備につきます。

▼ダイナマイト拳が退場
元プロボクサーであるビクトリー球団のダイナマイト拳は、拳(こぶし)でボールを止めようとしますが拳(こぶし)がぐしゃぐしゃに砕けます。

▼球八に多人数でキック
ヒットを放った球八は、二塁ベース直前でビクトリー球団の選手たちに一斉にキックされます。

▼ビクトリー球団の超守備
ホームラン性の当たりを止める大門のスーパープレイ。陣流拳法奥義・大車輪。

▼人間ナイアガラ
大門は球三郎との兄弟の確執に終止符を打つため球三郎抹殺へと動きます。大門の指示でビクトリー球団の選手が一塁側へ何人も集合し、一塁へ向かう球三郎に上空からキックを炸裂させます。

▼バロン森の守備
試合途中から登場した球四郎の切り札とも言える選手・バロン森。
ビクトリー球団も、複数の選手による空中スーパープレイを見せます。

ビクトリー球団の別の場面での連携プレイです。

▼伊集院大門死す
試合の途中で切腹し、かげ腹で戦った後に死亡します。陣流拳法総帥の座をめぐって弟・球三郎に行った数々の行為を詫びて試合中に自殺しました。
切腹場面の文章はユニフォームの下に入っていた「詫び状」の文書です。

▼バロン森死す
試合中にフェンスで頭を強打したバロン森は、ホームランを打ってベースを回っている最中、鼻や口から血を吹き出し、死亡します。

▼アストロ球団の外野での超守備
二段構えのジャンプで、はるか頭上の当たりでもキャッチします。

試合は最後、球四郎がピッチャーを務めていましたが押し出しフォアボールでアストロ球団が勝ちました。19対18です。

表紙です。20巻だけ買い逃してしまいまして、20巻だけ文庫本です。
