いくつかの退職方法

以前いた会社などで印象に残っている退職方法。
 
●ある営業所では、週に一回、本社から社長が来て、社員全員を集めて朝礼を行っていた。
朝礼の最初は社長の挨拶から始まるが、冒頭でいつもその営業所の「所長」がかなり怒られる。
 
「何ヶ月連続で予算切っとるんや!」
「一か月、何やっとったんじゃ、役立たずが!」
「お前の代わりなんか、なんぼでもおるんじゃ!バカタレが!」
 
こういう感じ。
 
ある日の朝礼でも同じように怒られ、その日とうとう所長が切れた。
 
社長に向かって
「うるせーんじゃ。テメェは!売り上げのことばっかり言いやがってーっ!」
 
と怒鳴った後、手に持っていたボード(伝達事項が書かれた紙をはさんでいた手板)をヒザに叩きつけて真っ二つに割り、その破片を思いっきり床に叩きつけて
 
「辞めりゃえーんじゃろーが!辞めたらーや、こんな会社!」
 
と怒鳴ってそのま家に帰り、その所長はもうそれっきり会社に来なくなった。もちろん引き継ぎも退職届もなしだった。
 
●とある別の営業所。
 
ある主任が、ある営業所に転勤してきた。その人は役職がついているから当然管理職なのだが、その営業所には、役職のない一般社員でありながら、社内ですごい権力を持っているAという男がいた。一番の古株で、すぐにキレて怒鳴るので、誰も逆らわない。
 
転勤してきて二か月か三か月が過ぎた時、その新任の主任とAがケンカになった。ケンカはしばらくして収まったが、よほどショックなこと言われたのか、その主任は駐車場に停めていた自家用車に乗り込み、それから2時間ぐらい車の中でボーッとしていた。
 
それから車を発進させて家に帰った。翌日はその主任は無断欠勤。所長が携帯に電話しても出ないし、家に行ってみてもいない。
 
何日も無断欠勤が続き、行方不明になっているので会社もしょうがないから退職扱いにした。
蒸発だったが、特に警察には届けなかった。
 
何か月か経ってその主任は、転勤してくる前にいた自分の地元で発見されたらしい。ちゃんと生きてた。
 
●またある別の営業所にて。
 
ある50代後半の社員が、所長のところへ来て
 
「所長、今日で会社辞めますけえ。」
 
と言ってきた。
 
「どうした?何かあったんか?」
 
と、所長が聞くと
 
「わしゃあ、ヤクザになりますけん。」
 
と答えた。あっけにとられたが、顔が真面目だったので、一応それで納得した。
 
でも2年くらい経ったら、その人はまたその会社に帰ってきた。どうもうまくいかなかったようだ。
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この3番目の人は、自分のやりたいことがあるからという発展的な理由で退職したのだが、1番目の所長と2番目の主任は、その日も普通に出勤していながら、その日突発的に退職することになった。
 
明日、いつも通りに出勤して、明日で辞めることになる場合も世間にはたまにある。

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