やる気から来る苦情

とある彼は、会社で外回りの営業をしている。自分の担当の店舗や会社を車でまわって、注文のあった品を納品していく。
 
ある日、彼が担当している店の一つで、毎月彼の会社から業務用の洗剤を5本ずつ買ってくれているレストランがあった。
しかしそのレストランも不景気で客の入りが悪くなったこともあって、今まで通り毎月5本も使わなくなってしまった。
 
経費削減ということで、「来月から3本ずつにしてくれ。」と、そこの店長が彼に頼んだ。
 
だが、これまで5本だったものが3本になると当然売り上げが落ちる。
 
売上げが落ちるとまた所長から
「他の店で何か売って、落ちた数字埋めて来い。」とか何とか言われるので、数字は落としたくない。
 
そこで彼が取った方法としては、勝手に1本当たりの値段を上げて・・要するに持っていくのは3本だが、請求する金額は今まで通り5本分と同じ金額になるように1本当たりの値段をつり上げたのだ。
 
確かに3本持って行ってることに間違いはない。本数を減らすように言われただけで、値段を上げるなとは言われていない。
 
これぞまさに数字のマジック。
 
しかし、これは一発でバレてしまって、会社に激しい苦情の電話がかかってきたらしい。
 
そしてまた、別の日。
彼の担当の会社で、「ある商品を100個ほど注文したいのだが、100個注文したらいくらになるか、見積もりを出してくれ。」と言われたことがあった。
 
だいたいお客が「見積もりを出してくれ」と言ってきたら、それは他の会社にも同じように見積もりを頼んでいて、比較して一番安いところから買おうと思っているというようなパターンが多い。
 
でもそれから2~3日して、その会社に、この間彼に聞いた「その商品」がいきなり100個送られて来た。
 
商品と一緒に入っていたのは見積もり書ではなく、納品書と請求書だった。
 
そして間もなくして彼がきた。「あ、お世話んなりますぅ!集金にお伺いしましたーっ!」とかなんとか言って。
 
見積もりを出してくれと言っただけで、いきなり商品と請求書が送られてきたら普通怒る。
 
一応相手はその料金を払ってはくれたが、彼はその店で怒られ、帰った後に会社に苦情の電話までかけられてしまった。
 
共通して言えることは、「売り上げを落とさない、あるいは数字を伸ばす」という意識が強すぎたために苦情が来るのであって、見方を変えれば、とてもやる気に満ちた社員と言える。・・というものでもなく、やはりこういうのは不正行為であり、お客を手放すことになる。

1 / 11
サブコンテンツ

このページの先頭へ