会社のカレンダー泥棒。
以前勤務していた会社でのことです。
毎年12月になると、その会社独自のカレンダーを作って取引会社やお客さんに配るといったことは、多くの会社でもやっていることですが、その会社も毎年会社独自のカレンダーを作っていました。
12月になると本社の方から各営業所にそのカレンダーが300本ぐらい送られてきます。
それで所長は大半の社員に2~3本ずつ渡し、それぞれの社員の担当のお客さんの中でも特に親しい人とか大口(おおぐち)のお客さんに渡すように言います。
ですがある年、長引く業績の悪化で毎年300本送られてくるカレンダーが、この年は100本になりました。
所長は本社の方から本数が少なくなったという連絡は受けていたので、今年は社員には渡さずに所長自身が大口の取引先にだけ持って行こうとカレンダーを配るリストを自分で作っていました。
そしてカレンダーが送られてきたのですが、その日はたまたま所長は休みでした。
カレンダーの入った段ボールを運送業者から事務員が受け取り、営業所の適当なところに置いておいたら社員の一人がたまたまそのダンボールの伝票を見てカレンダーが入っていることに気がつきました。
「おー、今年も来たかカレンダー。」
そう言いながらその社員は勝手にそのダンボールの封を切って中に入っているカレンダーを何本か取り出して持って行きました。
一人がそういうことをすると他の社員も当然後に続きます。100本ぐらいのものはあっという間になくなりました。
そして翌日、所長が出勤してくると送られてきたダンボールは空になっています。
どこに持っていくか計画を立てていたのに、もちろんそれは全部ぱーです。所長はどえらい怒りました。
「社員が勝手に営業所に来た荷物を開けるな!」
「それに勝手に中身を取っていくのなんか、泥棒じゃねえか!」
社員の方とすれば今年は本数が少ないとか所長が持って行くところを決めていたとか、そんなことは知りません。
毎年もらえるもんだから勝手に持って出たのにそれを今年に限って泥棒じゃねえかと言われてかなりムカッときました。
もうほとんどの社員は持って出たカレンダーはお客に配り終わって、ほとんど回収は不可能です。
文句言われた社員も言い返します。
「持って出て悪いものだったら、何で最初からそう言っとかないんですか!」
「この営業所宛に来た荷物を社員を開(あ)けて何が悪いんですか!」
「別に自分で着服したわけじゃないのに、ちゃんとお客さんに配ったのになんでこれが泥棒なんすか!」
「所長の連絡不行き届きでしょうが!」
持って出た運転手は何人もおり、その何人が一斉に所長に向かって反撃を始めました。確かに持って出るなとちゃんと言っておかなかった所長が悪いといえば悪いです。
そのことが頭をよぎったのか、所長は大して言い返せず押し切られる形でこの議論は終わりました。
しかし営業所宛に送られてきた荷物を一介の社員が勝手に封を切って開けてもいいものかどうか。そしてその中身をどうするか、普通の社員が決めていいものかどうか。
社員なんだからいいと言えばいいですし、身分を超えた越権行為だと言えばそうですし。
こういった荷物は普通は所長か事務員が開けますね。
ちなみにこの時、自分もカレンダーを勝手に持って出た人間のうちの1人でしたが、議論には参加せず、後ろで隠れていました。