人としての情けというものがないんか

ある中華料理屋に電話がかかってきたので、その店のマスターが出た。
 
「すいません、出前をお願いしたいんですが・・。」
と言うので、
 
「はい、ありがとうございます。お名前と住所と注文の品をお願いします。」
 
と言うと
 
「それがお金がないんで、今回はタダで持ってきてもらうというわけにはいきませんか?」
 
と言う。
 
「いや、後日払うというのならまだしも、タダで、というわけにはいきませんね、こっちも商売ですので。」
 
「そこを何とか・・。」
「いや、ダメです。」
 
「あんた、人が困ってるのに、見捨てる気か!」
と、相手も急に怒り出した。
 
「いや、何と言われましてもタダはダメです。」
 
「ワシが飢え死にしたらどうするつもりなんや!あんたにゃあ、人としての情けというものがないんか!」
 
と、更に怒るので
 
「いやいや、すいませんが、他を当たってもらえますか。」
 
と言うと
 
「もうええわい!二度と頼むか、この人殺しーっ!」
 
と怒鳴って電話は切れた。
 
「何じゃ、こいつはーっ!」
 
マスターも最初はムカついたものの、後になって考えてみれば、もしもホントにこの人が飢え死にして、死の間際に店の名前でも書かれたりしていたら・・という不安も若干頭をよぎる。
 
でも結局、名前も住所も言わなかったので相手も分からないまま。
 
困っている人を助けるのは人の情けではありますが、仕事が絡むとまた複雑。「料金を払わないと○○しません」も現実。
 
電気だってガスだって料金払わないと事務的に止めますし。
ちなみに自分は学生時代、ガスは2-3回止められたことがあります。電気は1回ほど。
 
腹は立ったが、この人どうなったんだろうと後々まで気になる電話。この要求、きいてくれた店があったのかどうか。

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