ちょっと変わった知り合い。(5)
▼09 若いころのケンカ。
今は社会人として働いていても、若い頃は相当ワルかった、という人はたくさんいますね。
自分が前の会社で出会ったその人は当時50代でしたが、その人と話していると、若い頃はケンカばっかりしていて、どういう相手に勝ったとか、2対1で勝ったとか、そういう話をよくしていました。
その中で印象に残っている話ですが、とある時、その人はまだ20代でしたが飲みに出ていて、そこの飲み屋でケンカになったそうです。
それで相手が刃物を持ち出して自分に向かって刺してきたので、左腕を犠牲にして左腕で刃物を受けて前腕を思いっきり刺されたそうです。
ですがその人が言うには、刺された瞬間に思いっきり力を入れると筋肉は硬直して刃物が抜けにくくなるというのです。
それで思いっきり力を入れるとちょっと引っ張っただけでは刃物が抜けなくなり、相手はひるんで刃物を諦めて手を離しました。
その瞬間、彼は近くにあったビール瓶を持ってテーブルでパーンと割って割れたビール瓶を相手の耳のところに突き刺したというのです。
そうしますと相手の耳の下半分が切断されて耳がぶらぶらとぶら下がっていたと言っていました。それで相手が詫びを入れて逃げて行ってそのケンカに勝ったそうです。
それで「その時の傷がこれじゃ」と見せてもらいました。確かに左前腕に刃物が刺さったらしい一直線のような傷はありました。
また別の日、その人と話していると、その人が
「お前、トンカチで人の頭を殴ったことがあるか?」
と聞いてきました。
「いや、普通そんなことしないでしょ。殴ったことがあるんですか?」
と聞きますと
「昔1回やったことがある。」
と言います。
「トンカチで人の頭殴るなんて危ないですね。正当防衛だったんですか?」
と聞きましたら
「いや、正当防衛ではないのぉ。」
と言います。
「ケンカの勢いでそういうことになったんですか?」
「いや、ケンカでもないのぉ。」
と言うので
「正当防衛でもケンカでもないのになんで人の頭トンカチで殴ったんですか?」
と聞きましたら
「殴られそうな雰囲気になったから先に殴った。」
と言います。
「いや、それは先制攻撃というんでしょ。すごいことしますね。それで相手は大丈夫だったんですか?」
と聞きましたら
「いや、目の黒い部分がなくなって目の中が全部真っ白になった。それで相手も動かんようになった。
意識がなくなったら、目の黒いところがなくなるんじゃの。わしは、あんな目は初めて見たで。それで一応責任を感じて救急車を呼んでやった。」
と言ってましたが、この人その時、逮捕されなかったんですかね。
▼10 車を次々買い換える。
自分が前いた会社では生活が破綻しているような人が結構多かったのですが、とある彼もその一人でした。
給料日になるといつも全額降ろしてパチンコに行きます。それで勝てばいいのですが給料全部使い切ったということが何回もありました。
給料日に給料を全部使い切るのですから、その月は金を借りて生活することになります。多分毎月そんな感じだったんでしょうけど、先月分の同僚への借金をちゃんと返してから、パチンコに行ってたんですかね?
それでその人極貧生活のはずですが、車やバイクを結構買い換える人でもありました。
ある時、会社で出会った時、
「また車買い換えたんよ。」
と彼が言ってきました。
「この間と、去年もそんなこと言ってませんでしたっけ?ひょっとして入社以来3台目ですか?」
と聞きましたら
「ああ、そうだね。」と言います。
どこにそんな金があるのかと思っていたら彼が話を続けます。
「一番最初の車は1万円でね、次の車が4万円。今回買ったのは8万円じゃ。」
と言います。
「今までで一番の高級車じゃないですか。」
と、言うと
「ええじゃろう。」と言ってました。
車を見せてもらいました。もちろん軽でしたが、あちらこちらの塗装が剥(は)がれており、ボンネットの一部は何か焦(こ)げたような跡があって、塗装がボロボロになっているところがありました。
シートはあっちこちが裂けていましたが、エンジンはかかるしちゃんと乗れるようです。
ところでこの人は原付も持っていましたが、話を聞くと、今の原付は2台目でした。1台目は5千円、2台目は7千円だったということです。
ところで今回買ったというこの車も車検が来る前に買い替えるんでしょうね。
「車を買っても車検は受けない。車検の前に買い替えるから。」
という人種です。ここだけ聞けば高額所得者のようです。